第8回東北屈折矯正研究会
小笠原 孝祐・小野寺 毅・吉田 隆司・山﨑 香苗
コンタクトレンズ不耐症患者と屈折矯正手術
当院で屈折矯正手術を受けた動機について、641名から得られたアンケート結果をまとめたところ、「コンタクトレンズ(CL)は異物感や充血が出現するので長時間装用できない」という理由が最も多く20%を占めていた。今回、当院において平成13年7月から平成20年6月までに、LASIKを施行した600名のうちCL不耐症と判断された症例をもとにLASIKの有用性についての再検討を行うとともにLASIK希望者への正しい啓発活動の重要性について述べてみたい。
コンタクトレンズ不耐症の定義を、
①日常生活上、ドライアイ、アレルギー性眼疾患によりコンタクトレンズの終日装用、使用継続に支障がある。
②コンタクトレンズによる眼合併症のため装用を中止すべき状況
③乱視矯正用のハードコンタクトレンズの装用が出来ない
という3項目にまとめてみた。これらに当てはまるLASIK施行例は221名であり、全体の約36%を占めた。このことは従来、一般的に言われてきたLASIKは眼鏡、コンタクトレンズに次ぐ第三の屈折矯正の選択肢であるという概念の時代からCL不耐症患者にとっては、QOL向上の意味から極めて有効な治療法と捉えられる時代に移行したと考えられる。
CL使用者は、現在1,500万人を超えていると言われており、日本眼科医会の調査によるとその30%は何らかの目の異常を感じており、10%の方は極めて危険な状態でCL装用を継続していると報告されている。
近年のLASIK希望者増加の要因には、CL使用者とCL不耐症患者の増加、LASIKの安全性と治療技術の向上とともに手術費用の低価格化があげられる。都市部における極めて安価なLASIK費用施設でのLASIK症例数の著しい増加は、東北地方の患者の流れにも明らかな影響を与えている。その結果として、術前履歴情報不備の患者、十分な理解を得ないまま安易な気持ちでLASIKを受ける患者や、合併症のため視機能の低下を生じる症例の増加につながっている。新技術への投資と採算性の板ばさみの現実に直面している東北地方のLASIK施設においては、その機能と質を維持するためには、CL不耐症患者への恩恵を与えるということを含め患者への正しい啓発活動が強く求められていると思われる。
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