第10回東北屈折矯正研究会

【 更新日:2013/03/27 】

小笠原 孝祐
術後患者の体験談から多焦点眼内レンズの限界について考える

当院では平成20年8月から多焦点眼内レンズ手術を開始し、平成22年7月末日現在の手術施行症例は32名59眼である。使用した眼内レンズはAMO社製テクニスマルチフォーカル34眼、リズーム1眼、アクリテック社製アクリリサ18眼、アルコン社製リストア6眼である。
今回、当院で施行した多焦点眼内レンズ手術症例のうち、両眼に同一タイプの眼内レンズ(テクニスマルチフォーカル)が嚢内に挿入され、瞳孔中心にレンズ中心が固定されており、裸眼視力が遠方1.0以上、近方0.8以上、術後屈折値は乱視が±0.5D以下で等価球面度数が±0.5D以下という術後の結果としてはほぼ完璧に近いと思われる9例(18眼)の症例について、アンケート結果と術後の診察時の話をまとめたので紹介・報告する。これらの患者さんのうち全く訴えのなかった方は1例のみであり、他の8例の方には何らかの愁訴があった。術後3カ月の満足度は6例が非常に満足、3例は満足であり、愁訴としてはコントラスト感度の低下、中間視の問題によるパソコン使用時の見え方が劣ること等が主なものであったが、夜間運転時のグレア、ハローが気になるという症状はそれぞれ11.1%、33.3%にみとめられた。術後の結果がほぼ完璧と考えられる患者さんでも多くの方は自分なりに日常生活上対処していることが分かり、また、術後一人一人の話には今後の術前オリエンテーションに役立つ情報が含まれていると思われる。
 多焦点眼内レンズ手術の適応患者さんの選定にあたっては白内障手術を希望した症例の中で、医学的な他覚所見とともにその方のライフスタイル、日常生活上における必要性、また経済力等を総合した上で多焦点眼内レンズ手術の説明を簡単に行い、アンケート用紙ならびに説明用パンフレットをお渡しし事前に読んで頂いた後、木曜午後の時間帯に一人の患者さんに30分を目途に詳しい説明を術者自身が行う機会を設け、手術を決定している。術前の説明にあたってはアンケート用紙に基づくその方のQOLとライフスタイルを十分に把握するとともに多焦点眼内レンズと言ってもオールマイティではなく遠近両用であること、また、あくまでも白内障手術の一つのオプションであるという点を強調している。
 多焦点眼内レンズ手術は的確な適応症例の選択と十分なインフォームドコンセントを得た上で行えば、十分な満足度を得て頂ける手術と考えられる。また、術後患者さんからの細かい訴えについても耳を傾けることはこの手術の適応拡大に結びつくと思われる。

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