強度近視でなくても眼窩窮屈病と同様の症状を呈することがある
【 更新日:2016/04/25 】
強度近視ではない患者で眼窩窮屈病により開散不全を呈したと考えられる5症例を経験したので報告する。症例の内訳は56歳~78歳で男性4例、女性1例であり、平均等価球面度数は-1.62D、開散不全の程度は遠方眼位4~16△の内斜視を呈していた。水晶体中央から眼窩先端までの長さの平均は43.80㎜と、対照として検索を行った9例18眼の平均値47.89㎜に比し統計学的に有意に短かった。MRIの眼球冠状断から計測された脱臼角の平均は108.8°であり対照眼の平均95.0°の間に有意差が認められた。病状の特徴としては、複視を自覚している期間が長いにも関わらず原因不明で治療がなされていない症例が多く、また経過中に複視の程度に変化がみられることである。今回報告する症例は全例膜プリズム治療を施行し、1例は内直筋後転手術を予定している。
開散不全のメカニズムは不明な点が残されている。従来、開散不全と診断された症例の中には眼窩窮屈病が見逃されていた可能性がある。眼窩容積が小さい例では強度近視でなくても眼窩窮屈病と同様の病態を示す可能性が推測されるからである。開散不全、開散麻痺の診療においては、眼窩MRI検索を行い眼窩窮屈病を考慮に入れる必要があると考えられる。
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