第7回眼鏡について考える会抄録

【 更新日:2016/07/05 】

一般講演

1.保育園・幼稚園児の視力検査の重要性を当院の経験とアンケート調査結果から考える

小笠原眼科クリニック視能訓練士 及川 萌

幼児期のなるべく早い時期に弱視や斜視を発見することは、予後の点からも重要であることは論を待たない。幼稚園・保育園健診は3歳児健診と就学時健診の間に位置する時期にあたり、在園中に視力検査を行うことは弱視、斜視の治療上、きわめて重要と考えられる。今回、当院の院長が園医をしている園児の御父兄の協力を頂き、盛岡市で出生届を提出した時に配布される「もりおか子育てぶっく」の内容を参考にアンケート調査を実施し、御父兄の視機能の発達や弱視、斜視についてどのぐらい知っているかを調査し報告した。
今回実施したアンケート結果から「もりおか子育てぶっく」が配布されているにも関わらず、3歳児健診で視力検査を受けていない園児が予想以上に多い(23%)ことが明らかとなった。また、保育園健診で視力検査を義務付けられていることを知らない御父兄が多いこと(71%)も分かった。当院で弱視の治療目的で就学前に眼鏡を処方した人数は過去20年間で189人であったが、その受診理由が3歳児健診や幼稚園・保育園健診での視力検査で異常とされたことよりも、他の症状で受診し偶然見つかった症例の方が多く約50%を占めていた。
以上のことから3歳児健診、保育園・幼稚園健診で視力検査の実施率を高め、御父兄に視力の発達に関心を持って頂くことが弱視の早期発見と早期治療において重要であると考えられた。

2.頂点間距離による度数と違和感について

株式会社メガネの松田社長 松田 俊記

角膜頂点間距離の基本は12㎜であるが、その変化により下記の4点に留意する必要がある。

1)度数の変化は、近視は頂点間距離が近づくと過矯正に作用する。特にコンタクトレンズ処方に関しては変化量が12mmになり、例えば-8.00Dの際は-0.768D分過矯正になることを考慮した度数調整が必須となる。また前回使用眼鏡が鼻パットのないプラスチックフレームなどの場合、頂点間距離は約10前後なり知らずに強い度数を使用していたことになるため、いままでどのような頂点間距離だったのかを確認する必要がある。

2)網膜像が変化する。通常不同視の場合は、眼鏡を掛けると左右の融像の差があり大きな違和感があり不具合を訴えることがあるが、頂点間距離が短くすると網膜像倍率の両眼の差が小さくなることを利用し、なるべく快適に眼鏡を使用してもらうため、わざと短くするという手法も考えられる。

3)頂点間距離を短くすると視野も広く確保することが出来る。1㎜近づけると10%程眼鏡を通した見える視野が広くなる。

4)掛け心地も、重心が顔に近いほど重くならず特にガラスレンズの際は鼻や耳に負担を掛けないので、頂点間距離を短くすることにより掛け心地の改善をすることが出来る。

以上の内容から、度数変化量を考慮に入れて、ある程度頂点間距離は詰めたほうが患者様の利点が多いと考えられる。

3.疲れ目対策レンズの現状と説明方法

株式会社ニコン・エシロール テクニカルマーケティング部マネージャー 秀島 誠司

近年急速に普及したスマートフォンの1日の平均利用時間は約2時間(注)と長く、使用距離は他のデジタル機器に比べて短い距離で使用されています。(スマホ15-30cm、パソコン50-70cm)。また年齢別の疲れ目比率は25-44歳が半数以上と最も多い状況です(眼鏡DB2015より)。長時間近くを見ると、毛様体筋が緊張した状態が続くため目の疲れを感じやすくなります。「調節サポートレンズ」は、レンズ下方に遠用度数+0.50D~+1.00Dを設定することでスマートフォンや長時間のパソコン作業による調節力の使いすぎをサポートします。

近くの疲れを考慮した近視弱矯正には「近くがラクなのに遠くが良く見える」、近視完全矯正には「遠くが良く見えるのに近くがラク」なメガネになります。

提案方法は疲れ目を再現することが必要です。遠くが良く見える度数で細かい文字を目に近づけ、疲れ目を感じる距離で10秒程見てもらいます。その後+0.50Dか+0.75Dの度数を眼前にあてるとラクに見えることを実感してもらいます。この度数が、電動自転車が漕ぎ出す時の力をサポートする力に相等することを説明すると理解しやすいです。

ブルーライトカットコートは、散乱し易い青い波長を若干カットすることで眩しさを和らげます。また、網膜に焦点を結びにくい青い光をカットすることでコントラストが上がります。青い波長を反射すると反射光がギラついたりゴーストが出やすくなるため、反射と吸収両方を使ったコートも発売されています。

(注)総務省「平成26年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」より

4.高齢者のメガネはどこが見えるのが望ましいのか---転倒予防と認知症予防から

鈴木眼科吉小路院長 鈴木 武敏

高齢者の不慮の死の原因として転倒が増えている。また、認知症の増加も無視できない問題になっている。その転倒と認知症の予防には眼科が深く関わっていることが意外と忘れられている。
一昨年から「足下視力」という、足先75㎝の視力検査表を試作し調査したところ、転倒の原因として足下視力の不良が深く関わっていることが明らかになった。さらに、足下視力の不良に立体視の低下が加わると、さらに転倒しやすくなることも統計的に示された。また、累進屈折力レンズ眼鏡を常用している人は足下視力が良ければ、転倒しにくいことが示され、これまでに、高齢者に累進眼鏡は適さないという主張が間違いであることが示された。
次に、90歳以上でありながら時計テストできれいな描画ができる人の共通点は、読書などの近作業が多く、家族に囲まれた生活で、視覚的な刺激が強い生活をしていることであった。
このことから、高齢者の眼鏡は、遠方視力よりも足下から手前がよく見えることの方が重要で、正しい屈折矯正で適切な累進屈折力レンズを選択し、常用してもらうように指導すべきである。白内障術後も裸眼で足下が見えるようにしてあげることが勧められ、多焦点眼内レンズは状況によっては、足下が見えにくく、逆に転倒を増やす可能性が高くなる可能性がある。また、モノビジョンも立体視の低下のために転倒しやすくなると考えられる。

特別講演

日常視力評価の新たなアプローチ

北里大学医療衛生学部視覚機能療法学視能検査学教授 半田 知也 先生

通常の視力検査は片眼を遮閉して非遮閉眼の視力を測定する片眼遮閉視力が常識的に用いられている。片眼遮閉すると両眼開放下に比べて有意に瞳孔経は散大し、それにより焦点深度の低下、収差の増大が生じ、結果的に自覚屈折値の増大(近視化)、視力値の低下が懸念される。日常視力を評価するためには自然瞳孔下で視力検査を行うことが理想である。これまで方向変換ミラー、すりガラスレンズ、偏光フィルターによる両眼分離などを用いて行われてきたが、様々問題点があった。近年我々は日常視力を評価する為両眼開放下の片眼視力測定を行う新しいコンセプトの両眼開放視力検査の効果について報告した(Handa T, et al. J Refract Surg,2015)。本法はタブレット端末の偏光フィルム層を剥離する技術を用いて、偏光レンズを通した眼のみ視力表(ランドルト環)が見えるように加工したタブレット型視機能検査訓練器Occlu-pad®(JFC社)を用いる両眼開放(測定眼に円偏光レンズ装用及び他眼は非遮閉)視力検査法である。両眼開放視力検査における自覚的屈折値は、従来の片眼遮閉下の自覚的屈折値に比べて有意に低値となる。片眼を遮閉しない両眼開放視力検査は日常視を評価し、片眼遮閉下に比べて過矯正を防ぐ効果が期待される。

また、日常視力に関する患者の日常生活ニーズとして読書などにおける“実際の見え方”の希望は高い。近年、LED照明の波長制御技術により、LED照明の色温度、彩度を制御することで、従来の照明光に比べて文字のコントラストが向上し、読書時の見え方が向上できることが報告され、照明メーカーの家庭用LED照明(色温度6200K)として一般家庭に普及し始めている。

本講演では両眼開放視力と家庭用照明(LED)を中心とした日常視力を評価する新たなアプローチについて考察する。

前のページへは、ブラウザの戻るボタンでお戻りください。

TOPへ