第9回眼鏡について考える会抄録

【 更新日:2018/07/22 】

特別講演

光環境に着目した近視進行抑制 -バイオレットライトとの出会いから臨床応用に向けて-

慶應義塾大学病院眼科学教室助教 鳥居 秀成 先生

近年世界の近視人口が急増している。全世界の近視人口は2050年には全世界人口の49.8%の47億5800万人、失明リスクのある強度近視の人口は9.8%の9億3800万人になると報告(Holden BA, et al. Ophthalmology, 2016)されている。近視は環境因子と遺伝因子により発症・進行すると考えられているが、このわずか数十年での世界的かつ急激な近視人口の増加は何らかの環境因子の変化が原因である可能性が高い。

強度近視になると緑内障・網膜剥離・黄斑疾患など様々な眼疾患を合併しやすいことが知られており、「風邪は万病のもと」ならぬ「近視は眼病のもと」といっても過言ではないと思われる。学童近視が失明に至る強度近視・病的近視に結びつくかどうかは議論があるところだが、強度近視にまで至らないようにすることには異論はないと思われる。

一般講演

1.眼鏡で重要な鼻パット

株式会社メガネの松田社長 松田 俊記

1.眼鏡フレーム調整の第一歩は、鼻パットの位置決めです。パット位置を決めたあと前傾角やテンプル調整をします。鼻、耳の4か所になるべく均等な重さが掛かると見え方も掛け心地も快適に眼鏡を使っていただくことが出来ます。
眼鏡が正しい掛け位置に来なければ、せっかくの精密な視力検査、歪みの少ないレンズ、軽いフレームを選んでもその効果を充分に発揮することが出来なくなります。累進レンズのみならず単焦点でも重要な要素です。
累進レンズで、購入直後の視界不満の多くは、掛け具合調整で解決することが出来ると思われます。

2.パットとクリングスには多種多様な種類があり、またパット備品も様々発売されています。 お客様の年齢や男性、女性。使用目的、選んだフレームなどに合わせ、より快適なQOVの提案を眼鏡店でも積極的に行っております。
鼻パットの調整出来ないセルフレームも、素材や作りによっては調整可能なパットを後付けすることも可能です。

3.鼻が低くなかなかパット調整が難しい0~小学生低学年におススメのフレ-ム。
乳幼児におススメ「トマトグラッシーズ」
部活に必須になるかもしれない「スポーツゴーグル」
今後も様々な用途の商品を、患者様、眼科様に紹介していくことも眼鏡店の大切な役割だと考えております。

2.当院の小児屈折検査の具体的手順

松田眼科クリニック 村上綾香、稲田歩、松田恭一

小児の屈折検査には調節麻痺薬が必要不可欠といわれているが、当院では通常、小児の屈折検査時には眼鏡処方時も含め調節麻痺薬は点眼せずに行う場合が多い。

オートレフ値だけを参考に自覚的屈折検査を行えば、多くの場合近視では過矯正、遠視では低矯正となり矯正不十分となる。それを避けるための、当院でルーチンに行っている手順を紹介する。眼軸長検査(IOLマスター)を検査の中に取り入れることで、自覚的屈折値結果と照らし合わせることが出来、さらには今後の屈折変化の予想、そして保護者への説明もわかりやすいものになる。最後に、検査後の診察で、院長がマニュアルレフで調節の介入を確認して、他覚的屈折値を出し、総合的に見て屈折値と、必要ならば眼鏡度数を決定している。

一方、不同視や中度~強度遠視、または弱視が疑われる患児には、院長の指示のもと調節麻痺薬を点眼している。

教育講演

弱視の診察について

岩手医科大学眼科学講座講師 田中 三知子 先生

我が国では、発達したインターネットの医療情報を得る機会が多く、また、各種の乳幼児・児童の検診が充実していることもあり、眼や視力に異常があれば比較的早期に医療機関を受診する傾向になったようである。診療機関の間で医療格差が少ないことも我が国の保険診療のメリットではないかと思う。弱視には斜視弱視、屈折性弱視(不同視・屈折異常弱視)、視覚刺激遮断弱視、健眼遮蔽の副作用としての遮蔽弱視などがあるが、屈折性弱視は各医療機関で適正に治療されていると思われる。治療が奏功しない症例、斜視 / 器質的異常を伴う症例、検査に協力が得られない年齢、あるいは障害がある子どもの診察は難しい場合もあり、当院にはそのような子どもが多く集まる傾向がある。これらの子どもにおいても、我々がするべきことは同じであるが、視力が測定できないゆえに屈折検査が重要になること、長い時間と様々な手段が必要になる。本日は我々が用いている屈折検査の手法や調節麻痺薬の選択、健眼遮蔽の適応症例、遮蔽時間、治療撤退のタイミングなどについて述べたいと思う。


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