第3回岩手甲状腺眼症研究会抄録

【 更新日:2012/09/29 】

講演

甲状腺眼症の活動性の評価と治療

兵庫医科大学病院眼科講師 木村 亜紀子 先生

甲状腺眼症は炎症期と非炎症期により治療方針が異なる。一般的に、炎症期にはまず消炎を行うことが優先され、炎症期に外眼筋手術や眼窩減圧術などの観血的治療を行うことは視神経障害を呈した緊急事態など特別な場合に限られる。では、その炎症期の評価はどのようになされるのか。最も正確な評価方法はMRIを用いた画像診断である。T1強調画像冠状断では水平・上下直筋の太さを、軸位断では内外直筋の形態を知ることができる。眼窩先端部での視神経圧迫状態も同時に判断する。炎症期の評価はT2強調画像で行うのではなく、STIR法(short T1 inversion recovery)が適している。冠状断、軸位断、さらには矢状断で下斜筋と上眼瞼挙筋の評価を行う。炎症があると高信号域として描出される。この時、眼位・眼球運動が外眼筋の肥大・炎症と相関しているかをチェックすることが大切である。例えば、甲状腺眼症であれば下直筋に肥大・炎症がある場合、患眼は下斜視になり上転障害を呈している。この時、患眼が上斜視であれば、甲状腺眼症よりも外眼筋炎や筋無力症との合併が示唆される。甲状腺眼症は他の疾患との合併もあり、画像診断は臨床症状と合致させながら行うことが大切である。
治療は炎症期にはステロイドパルスを中心とした消炎治療が施行されるが、眼球突出や眼球運動制限に対しては著効しない。そのため、患者自身が炎症期にもかかわらず外眼筋手術を希望するケースもある。本講演では、炎症期に施行された外眼筋手術の治療成績も含め、甲状腺眼症の炎症の評価と保存的治療の効果、外眼筋手術の治療成績について解説する予定である。

特別講演

バセドウ病眼症の発症のメカニズムからみた診療ガイドライン

久留米大学内分泌代謝内科部門教授 廣松 雄治 先生

バセドウ病眼症(甲状腺眼症)はバセドウ病や稀に橋本病に伴ってみられる眼窩組織の自己免疫性炎症性疾患である。Muller筋、上眼瞼挙筋、外眼筋、脂肪組織、涙腺に炎症をきたして、上眼瞼後退、眼瞼浮腫、眼球突出、涙液分泌低下、結膜、角膜障害、複視、視力低下など多彩な症状を呈する。重症例ではQOLが著しく損なわれる。また、美容上の問題を訴える場合も多く、心理面からの配慮も必要である。

病因と病態
免疫学的寛容の破綻、遺伝素因、環境因子などが発症に関与し、TSH受容体、IGF-1受容体、外眼筋抗原などを自己抗原とする自己免疫機序により発症すると考えられている。詳細な発症メカニズムは不明であるが、眼窩組織の線維芽細胞の関与が示唆されている。TSH受容体の強発現するCD34+眼窩線維芽細胞はIL-6、IL-8、TNFα、ヒアルロン酸などを産生し、CD34-眼窩線維芽細胞はIGF-1受容体を強発現し、IL-16、RANTES、IL-1α、Prostaglandin E2、長鎖のヒアルロン酸を産生し、T細胞の眼窩組織への遊走を促す。CD90+眼窩線維芽細胞はTGFβの作用でmyofibroblastへ分化し、外眼筋の線維化に寄与する。炎症が強い場合は2次的に外眼筋の障害をきたす。

眼症の診断
一般眼科医や内科医を受診する機会も多いので、まず眼症の専門医への紹介の基準が必要である。

重症度や活動性、QOLの評価
眼症の重症度と活動性の自然経過は時間的にズレがみられる。どの時期に治療するかで、治療効果は大きく異なるので、治療法の選択や治療のタイミングに重要である。

MRIによる評価
眼症の病態の把握や免疫抑制療法の効果予測に有用である。T1強調画像、T2強調画像またはSTIR画像を撮像する。T2緩和時間やSTIR信号強度は炎症の指標となる。水平断、冠状断、矢状断で撮像する。

治療指針
重症度と活動性、病態に応じた治療法を選択する。軽症例ではステロイドの局所注射療法、中等症以上で活動性があれば免疫抑制療法(ステロイドパルス療法)や放射線照射療法、非活動性であれば眼科機能回復手術などが適応となる。

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