第8回岩手甲状腺眼症研究会抄録

【 更新日:2017/10/23 】

 

Ⅰ.教育講演(1)

一次性副甲状腺機能低下症の2例(白内障性癲癇1例を含む)

1佐々木 純、1)栗原 英夫、1)髙屋 潔、1)小谷 康慈、2)江村 洋弘

1栗原甲状腺クリニック、2)江村内科医院

緒言:非常に稀な一次性副甲状腺機能低下症を2例、経験したので報告する。

症例:症例1は38歳女性。25歳の時から時々意識消失を伴なう全身痙攣があった。癲癇としてバルプロ酸ナトリウムを投与されていた。28歳、両眼白内障手術を受けた。31歳、血中カルシウム4.5mg/dl低値、intact PHT 3.9pg/ml低値、大脳基底核の石灰化が判明し、一次性副甲状腺機能低下症と診断され、活性ビタミンD3 3㎍/毎日を投与されたら、痙攣発作は起こらなくなった。症例2は41歳男性。13歳の時から毎年1回ぐらい、意識消失を伴なう全身痙攣があった。癲癇としてバルプロ酸ナトリウムを投与されていた。31歳の時の発作は腹筋痙攣による激しい腹痛を伴なったので、消化器内科を訪れたところ、血中カルシウム5.3mg/dl低値、Hs-PHT50pg/ml低値で、一次性副甲状腺機能低下症と診断され、活性ビタミンD3 3㎍/毎日を投与され、癲癇様発作は起こらなくなった。

考案:一次性副甲状腺機能低下症は極めて稀な疾患である。91例の文献例を見ると、年齢は7ヵ月から77歳で、性差は無い。クボステク徴候陽性から全身痙攣に至る神経筋過敏が60%に見られた。大脳石灰化が92%、白内障が35%に見られ、白内障性癲癇とも呼ばれる。副甲状腺にリンパ球浸潤があり、抗副甲状腺抗体が陽性であったという研究があり、自己免疫疾患らしい。脳基底核の石灰化が癲癇様発作を誘発し、低カルシウム血症がそれを助長するのであろう。活性ビタミンD3投与で、発作はおさまる。

Ⅰ.教育講演(2)

バセドウ病の外科治療

岩手県立中央病院乳腺・内分泌外科 渡辺 道雄

バセドウ病の治療は、基本的に抗甲状腺薬・放射性ヨウ素内用療法・手術の三つからなる。日本では抗甲状腺薬が治療の主役であり、近年放射性ヨウ素内用療法の増加にともない、外科手術の出番は減ってきている。

手術の適応となるのは内科的治療の難しいものが中心で、「抗甲状腺薬で副作用」、「寛解困難が想定(大きな甲状腺腫、増大傾向、抗体高値、コントロール困難)」、「早期の回復を望む(早期妊娠希望など)」、「甲状腺腫瘍(癌)合併」、「高度な甲状腺眼症」などの場合には手術療法が望ましい症例も多い。手術は、短期間で確実な治療効果が期待でき、今後もけっしてなくなることのない有用な治療である。

術式は、かつては機能正常を目指した亜全摘が主流であったが、最近はより甲状腺残置量を減らした再発のない手術(超亜全摘や全摘)、すなわち確実な機能低下を目指す手術が主流になってきているようである。

当科で最近5年間に手術を施行したバセドウ病症例は72例(男12:女60)、平均年齢40.0歳(17~78)であった。手術理由は様々であったが、20~39歳の女性33例中17例で妊娠希望が手術選択の理由の一つになっていた。その一方で60歳以上の9例では5例が「腫瘤(癌3例)合併」、2例が「巨大甲状腺腫」で、バセドウ病の治療が主たる目的でない症例も多くなっていた。術式は超亜全摘2例、全摘70例で全例甲状腺機能低下となった。

Ⅱ.重症例の治療について

重症のバセドウ病眼症についての対処法:特に放射性ヨード療法後の患者さんについて

1)小笠原 孝祐、2)柿崎 裕彦

1小笠原眼科クリニック、2)愛知医科大学病院眼形成・眼窩・涙道外科教授

 

重症バセドウ病眼症と呼ぶべき病態には、以下の4つが考えられる。

1.視神経症

2.重度の眼球突出(23mm以上)

3.両眼単一視のできない眼球運動障害

4.重度の上下眼瞼後退

1.視神経症:主な特徴は、1)喫煙者に多い 2)眼球突出が軽度 3)放射性ヨード治療後に生じることがある、などである。

特に3)は甲状腺医が良かれと思って行った治療の案の外の合併症である。眼科医は、視神経症を生じさせないよう、甲状腺医に助言をする立場にあり、本治療に対して重要な立ち位置にある。

眼窩炎症のある患者へ件の治療は行うべきではないが、このような患者に対しての、眼症発症予防の目的でのステロイド投与の是非は確立されていない。

眼症が生じてしまった場合、プレドニン®(5mg)5~6錠の経口投与を3か月かけて漸減する方法が推奨されてきたが、効果が不十分の患者もいた。そこで、ソル・メドロール®250mg(週1回)点滴x4回という新たなレジュメが提示された。本治療によって、ほぼ完全に眼症の悪化は予防できるとされている。我々はこのような患者には、慣れたレジュメであるステロイドパルス療法(ソル・メドロール®500mg x3日点滴x3クール)+放射線治療を行っており、まずまずの結果を得ている。

2.重度の眼球突出(23mm以上)、3.両眼単一視のできない眼球運動障害、4.重度の上下眼瞼後退のうち、3.に関しては三村氏の講演に詳しいので、私は2、4について、当院で行っている方法を提示する。

2.重度の眼球突出(23mm以上)に関しては、眼窩炎症の消退を待って、外側深部眼窩減圧術を基本選択として、減圧術を行っている。脂肪切除は神経麻痺や癒着の原因になることがあるため、最近では極力行わないようにしている。第2選択は内壁減圧となる。

4.重度の上下眼瞼後退について、上眼瞼ではしなやかさが要求されるため、挙筋群を耳側結膜からはがしてゆく方法を第一選択としている。予定外重瞼線予防のための腱膜前脂肪の前転は必須の手技である。

下眼瞼に関しては、抗重力効果を目指す必要上、耳介軟骨の移植を行っている。眼球のカーブにfitさせるため、横幅は18mm以下にする必要がある。縦幅に関しては、延長というよりも、Lockwood靭帯の上に軟骨を載せるというテクニックとなるため、8mmで十分である

Ⅲ.特別講演

甲状腺眼症治療アップデート

兵庫医科大学神経眼科治療学講座特任教授

三村 治 先生

自己免疫疾患である甲状腺眼症(GO)の治療と言えば古くからステロイドの投与が行われてきた。しかし、以前から内科主体のステロイド内服は副作用の割に効果に乏しいとされ、わが国では多くの施設で1回1000㎎を3日間のステロイドパルス療法2-3クールがおこなわれるようになった。また、欧州甲状腺眼窩症治療研究班(EUGOGO)の2008年の勧告でも中等症から重症のGOでは一連の治療で8gを越えない点滴での治療が推奨された。しかし、2016年のEUGOGOのガイドラインでは1回1000㎎のパルス投与は合併症の危険性から忌避され、週1回500-750㎎の投与からの12週の外来点滴投与が推奨されている。またガイドラインではあまり触れられていないが、眼瞼浮腫や眼瞼後退には隔週あるいは月1回のトロアムシノロンアセトニド(TA)の反復局所注射が有効との報告、また20プリズム以内の内斜視や上下斜視にはボツリヌス毒素(BTX)の外眼筋注射が有効との報告もある。また自験例では大角度の斜視にBTX併用斜視手術が術前予想をはるかに上回る効果をもたらしている。本講演ではこれら最近の文献とTA注射、BTXの外眼筋注射などの自験例をもとに、これからのGO治療を考えてみたい。

 

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