平成14年12月号(№56) 「ドライアイ」について
例年よりもずいぶん早い雪に驚かされて今年も冬がやって参りました。ストーブで暖まったお部屋で冷たいビールにひんやりアイスクリーム、寒い北国にもこんな幸せ・・・。でも、いつもよりも目が疲れやすかったり、ゴロゴロしたりはしませんか?そのような症状がある方は『ドライアイ』かもしれません。
涙は毎分1.12マイクロリットル、1日に大体1ミリリットルちょっとが作られています。この涙が表面を濡らすためには
1.涙腺からの分泌
2.まばたきによる分配
3.目の表面からの蒸発
4.涙点からの涙の排出
といった条件がそろう必要があります。これらのどこかがうまくいかないと、いわゆる『ドライアイ』ということになります。
1.涙腺からの分泌
外来で両目に細い紙を下げて検査しているのを御覧になったことはありますか?あれは涙液基礎分泌検査といって、悲しいとか痛いといった刺激が何もないときに目の表面を潤している涙の量を測っているのです。普段、目の表面にある涙は3層に分かれていて、1番上は蒸発を防ぐ油の層、2番目が涙腺から出る水の層、そして3番目は涙が目の表面にうまくのっていられるように働くムチンと呼ばれる層です。この涙腺の働きが弱って水の層が減ってしまうタイプを涙液減少型ドライアイといいます。
2.まばたきによる分配
涙を作る方が正常でもまばたきがうまくいかないと、涙は目の表面を均一に覆うことができず、やはりドライアイになってしまいます。まばたきは正常な人で1分間に約20回、何かに集中しているときにはこれが半分以下になってしまいますから、もともと涙を作る量が少ない方は車の運転や読書、パソコンの作業などの後は目も相当つらい状況にあります。
3.目の表面からの蒸発量
普通は作った涙の約10%が蒸発しますが、甲状腺の病気などで目の幅が大きくなると、涙は余分に失われてしまい、蒸発亢進型のドライアイとなります。また、誰でも上を見上げる時には目を大きく見開きますから、ドライアイの方はテレビやパソコンの画面、あるいは読書をする時、本の位置を少し見下ろすような角度に心掛けて頂くと楽になることも多いようです。また、冬期間のような湿度の低い環境が続くと、涙の蒸発量が増えてしまい、症状が悪化する方も沢山いらっしゃいます。
4.涙点からの涙の排出
涙を作る方は良くても、出口の涙点が大きすぎてバランスがとれずにドライアイということもありますが、このケースはあまり多くありません。
治療の主力はやはり目薬、そして蒸発を防ぐ保護用メガネ、それでもダメなら出口の涙点を塞いでしまうということになります。ただ一口にドライアイといっても、シェーグレン症候群(涙だけでなく唾液も出ずに口が渇く、あるいは関節が痛くなるといった症状を伴います)のような全身疾患の一部であることもあり、また、その程度によっても治療の内容は患者さんそれぞれですから、何か思い当たることがあったり、症状に変化がある方はお気軽に御相談下さい。どうぞお肌だけではなく、皆様の大切な目も冬の乾燥から守ってあげて下さいますよう・・・。
副院長 大森 可芽里