平成22年5月号(No.89) 世界遺産屋久島を訪ねて
ゴールデンウィークに世界遺産に登録されている屋久島に行ってきました。屋久杉はあまりにも有名ですので、樹齢3,000年の屋久杉を初めとする自然林が屋久島が世界遺産に登録された理由と思っていました。しかし、それは誤っていました。屋久島が世界遺産に登録されたのはその自然環境の特異性にあることを初めて知りました。すなわち屋久島はマグマの活動の影響で花崗岩の岩盤を持つ地形が浮き上がり、島の中央部には海抜1,936mの宮之浦岳を初めとする九州地方の標高が高い山岳のベスト8までが島の中央部に存在し、亜寒帯の気候となっているのに対し、海岸沿いは逆に亜熱帯の暖かい気候という、一つの島の中に垂直分布と呼ばれる気候の変化がみられることがその理由であることが分りました。
今回の旅行の主目的は屋久島でトレッキング(trekking)を楽しむことであり、白谷雲水峡に足を運びました。白谷雲水峡は標高600~700mの白谷川源流部に広がる自然林で、弥生杉などの巨大な屋久杉と花崗岩の渓谷、またそれに生えるコケが見事であり、その途中には多数の滝もあり、非常に神秘的かつ素晴らしい景観のハーモニーを感じました。道は足元がかなり悪い状態でしたが、往復約6時間マイナスイオンを体全体に感じることができました。
写真は「もののけの森」と称される白谷雲水峡の奥にある場所で、アニメ「もののけ姫」のモデルになった地点です。
<< 世界遺産について >>
世界遺産とは1972年のユネスコ総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(世界遺産条約)に基づいて、世界遺産リストに登録された遺跡や景観そして自然など、人類が共有すべき「顕著な普遍的価値」をもつ不動産を指すそうです。世界遺産にはその内容によって文化遺産、自然遺産、複合遺産がありますが、我が国の自然遺産としては屋久島、青森の白神山地、知床が登録されており、文化遺産としては法隆寺地域の仏教建造物、姫路城、古都京都の文化財、白川郷合掌造りの集落、原爆ドーム、厳島神社、古都奈良の文化財、日光の社寺、琉球王国のグスク及び関連遺産群、紀伊山地の霊場と参詣道、石見銀山遺跡とその文化的景観が登録されています。
岩手県内の平泉も世界遺産登録を目指していますが、その登録審査条件からは複合遺産的な要素を加味してもかなり難しいところがあるように感じています。しかし、もし世界遺産に登録された場合には岩手県にとっては大変喜ばしいことです。
<< 屋久杉について >>
屋久島の森というと、屋久杉がすぐ思い浮かびますが、天然の杉はこの島では標高600メートル以上でないと自生していませんので、島中どこでもみられるわけではありません。また、屋久島で屋久杉というとき、それは樹齢千年を超える大木だけをいいます。生物ですから生き残って高齢になるのもそんなにおおくないでしょうし、江戸時代から本格的な伐採がされてきた歴史をもつだけに、残されている数は多くはないようです。
屋久杉の中でも特に高齢であったり、特徴のある屋久杉には縄文杉のように固有名がつけられていますが、それらの所在地は様々な場所に散っていて、それも歩道を延々とたどった先に立っているので、多くは見たくても見られるものではありません。