平成22年3月号(No.88) コンタクトレンズ消毒剤について
現在、日本でのコンタクトレンズ装用者は、装用人口の低年齢化と使い捨てコンタクトレンズの普及とともに、装用者の7~10%に眼障害が発生しているといわれています。これらの障害の中で、近年、アカントアメーバ角膜感染症が増加しています。アカントアメーバ角膜感染症は充血、視力障害、強い眼痛などの症状を示し、失明に至ることもある重傷で難治性の病気です。この病気の90%は、コンタクトレンズ装用者で、その中でも2週間頻回交換ソフトコンタクトレンズを洗浄・すすぎ・消毒・保存の一連の手技を一つの製品で行うことができるソフトコンタクトレンズ消毒剤マルチパーパスソリューションを使用している者に多いといわれています。ソフトコンタクトレンズは使用後に洗浄・消毒を行う必要があります。この洗浄・消毒については、最近は市販の消毒剤を用いた化学消毒が主流です。
昨年、12月に国民生活センターからソフトコンタクトレンズ用消毒剤11銘柄(マルチパーパスソリューション8銘柄、過酸化水素タイプ2銘柄、ポピドンヨードタイプ1銘柄)の消毒効果とソフトコンタクトレンズの使用実態・衛生状態調査についての発表がありました。その結果、アカントアメーバを各消毒剤に浸けた時の消毒効果については、マルチパーパスソリューション8銘柄中過酸化水素タイプやポピドンヨードタイプと同程度の効果を示したのは2銘柄のみでありました。また、消毒剤を注ぎ足して使用するとアカントアメーバは死滅せずに残存する可能性がありました。使用実態・衛生状態調査については、調査対象の2週間頻回交換ソフトコンタクトレンズ使用者の約10%にコンタクトレンズとコンタクトレンズケア用品からアカントアメーバの汚染が確認されました。一方、細菌は、コンタクトケア用品中の60%に検出されました。この細菌検出率は、過酸化水素タイプの消毒剤よりマルチパーパスソリューションで多いことが確認されました。
以上の結果より、多く使われているマルチパーパスソリューション消毒剤の消毒効果だけでアカントアメーバや細菌を完全に消毒することはできません。また、他の過酸化水素タイプ、ポピドンヨードタイプの消毒剤でも同様で、アカントアメーバや細菌を完全に消毒することはできないとわかりました。
コンタクトレンズ用消毒剤そのものの消毒効果には限界があると考えられるので、アカントアメーバや細菌による角膜感染症を起こさないためにはコンタクトレンズやコンタクトケア用品にこれらの微生物が着かないようにすることが大切になります。
そのためには、以下のことが非常に重要です。
1)コンタクトレンズを取扱う前に石鹸で手洗いすること
2)コンタクトレンズをこすり洗いすること
3)レンズケースを定期的に交換する
副院長 小野寺 毅