平成18年8月号(No.71) 今年は流行の兆し -はやり目に注意-

【 更新日:2006/08/01 】

結膜(まぶたの内側の白目の表面の薄い膜)の炎症(充血、腫れ)は、その原因に関わらず結膜炎と呼ばれます。結膜炎の原因は、ばい菌などの感染によるものとアレルギーなどの非感染性のものがあります。今回、感染によって起こる結膜炎について目を向けてみましょう。感染性結膜炎の原因には様々ありますが、細菌性とウイルス性結膜炎がしばしばみられます。
Ⅰ.細菌性結膜炎
 この結膜炎の主な原因となるばい菌は、乳幼児ではインフルエンザ菌、学童期では肺炎球菌、成人ではブドウ球菌です。これらのばい菌は人から人にうつることもありますが、ウイルス性結膜炎ほどの感染力はありません。症状は急に、または、やや急に片方の眼に起こることが多く、自覚症状としては結膜の充血、腫れ、異物感(ゴロゴロとゴミでも入ったような感じ)、涙、目やになどです。治療は、抗菌点眼剤(ばい菌を殺す目薬)で行われ、通常、数日から1週間くらいで治ります。
Ⅱ.ウイルス性結膜炎
 ウイルス性結膜炎は、ウイルスが原因となって起こる結膜炎で「はやり目」とも呼ばれます。このうちしばしばみられる流行性結膜炎と今年、流行が懸念されている咽頭結膜炎について記載します。
1)流行性結膜炎
 この結膜炎の原因はアデノウイルスで、その中でも8型、19型、37型で起こります。
 症状は急激に起こり、結膜の充血、涙、目やに目の痛みなどです。通常、両目に起こりますが、症状の始めは片目だけで、数日遅れて反対の目にくることもあります。重症の場合には、瞼が腫れ目を開けにくくなります。診察では、結膜の充血と濾胞(瞼の結膜の小さなこぶ状のできもの)があり、また角膜(黒目)に点状の濁りが見られることがあります。また、耳の下のリンパ腺が腫れることがあります。治療はウイルス以外のばい菌がつかないように抗菌点眼剤を用い、また、充血や腫れをひかせるために炎症を抑える点眼薬を使います。通常、経過は良いことが多いのですが、まれに、後遺症として角膜に濁りを残し、視力が下がってしまうことがあります。ウイルス性結膜炎を起こした人は、1週間くらい他の人へ病気をうつしてしまう可能性があります。感染予防のため仕事や学校を休んで頂き、自宅で点眼治療をします。また、家庭ではタオルや洗面器などは家族と一緒に使わず、結膜炎になった人専用のものを準備します。点眼をするときは必ずその前後に石鹸を用い、流水で手指を洗うことも必要になります。
2)咽頭結膜熱(プール熱)
 この結膜炎の原因も流行性角結膜炎と同じアデノウイルスです。このウイルスのうち3型、4型、7型で起こります。夏に幼児や学童に起きやすく、また、プールを介して感染することがあるのでプール熱とも呼ばれます。既に今年は例年より多く見られており、流行の可能性がありますので注意が必要です。症状は発熱で始まり、咽頭熱(のどの痛み)が見られ、目の症状として結膜の充血、涙、まぶしさなどがあります。主に片目から始まり、その後に反対の目に起こってきます。診察では、結膜の充血と濾胞が見られ、流行性角結膜炎と同様ですが、結膜炎自体の症状は軽いことが多いです。治療は、流行性角結膜炎と同じ様に行われます。感染予防の注意点については、上記の流行性角結膜炎の場合と同じく手指の消毒とともにうがいが大切です。流行した場合は、プールの閉鎖や学級閉鎖がなされます。

副院長 小野寺 毅

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