「カルテビューア」システム
「カルテビューア」システムを導入して診療録管理
患者さん目線を大切にした診療を継続
小笠原 孝祐
はじめに
当院は開院して18年目になる眼科有床診療所で、二診体制で診療にあたっています。レセプトコンピュータ(レセコン)は開院時から、また、2000年11月からは画像ファイリングシステム(VK2、コーワ社製)を導入しています。
8年前より、学会や研究会の情報を基に電子カルテの導入を検討しましたが、2人いるメディカルクラーク(秘書)の助力を得たとしても、現在の外来患者数(1日平均150~200名)に対応することは困難と判断し、模索を続けておりました。また、電子カルテを導入した場合、当院における多種の機器との整合性(相性)が会わない場合システムがダウンしてしまうことを懸念し、その点も電子カルテ導入にふみきれない一因でした。
紙カルテのままでの最大の問題点はカルテの保管場所です。院内の置き場所は飽和状態に達しており、このまま増え続けると、いずれ業務に支障を来すのではないかと憂慮していました。
新システム導入時のポイント
このような矢先、「銀海/2008年秋号」の「臨床の第一線」の記事に、カルテをスキャンして管理するという「カルテビューア」システムのことが載っており、そのような選択肢もあるのかということで、早速メーカーの㈱京葉電子工業を探して問い合わせてみました。
システム選定にあたっては、カラースキャンであることのほか、以下の点を重要視しました。
1.簡単な操作
実際の診療では、ゆっくりコンピュータと向き合っている時間はありません。簡単な操作と少ないクリックで直感的に使用できるものが必要となります。また、代診の先生が来られてもすぐに対応できるシステムが良いと考えました。そして、秘書の協力が得やすいこともポイントとして捉えました。さらに、当院は有床診療所であり、レーシックをはじめとする自由診療も行なっているため、入院カルテや自由診療のカルテの選択も画面上のクリックひとつで簡単に切り替えができることも利点と考えました。
2.安定した稼動
電子カルテの一番のリスクはシステムのダウンです。特にファイリングシステムとのフルネットワークの場合には、画像が見られないだけではなく、カルテも参照できないことになり、全く診療にならない状況に陥ってしまいます。したがって、システムがダウンしないシンプルなソフトの構造であり、故障してもすぐにリカバリー可能なハード構成が必要と考えました。
3.スキャニングシステム
厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に沿った公正な運用により、ガイドラインに準拠することを確認しました。
4.サポート体制
「カルテビューア」システムのメーカーは東北地方に支店はなく、システムダウンについて正直なところ不安がありました。なぜなら、遠隔操作による保守サポート体制であったからです。しかし、この点に関しては、必要な調整やバックアップサーバーの切り替えが行なえる体制を準備することで対応できると考えました。
導入の準備と費用
有線LANによるパソコンは2つの診察室にデスクトップ各1台、受付にノートパソコン2台の計4台を設置し、院内の1階と2階に各1カ所の無線LANアクセスポイントを新設し、各検査データの入力や入院カルテに対応するために計7台のノートパソコンを配置しました。
総経費は、システム本体に加え、プリンター3台、スキャナー2台、電子認証システム、バックアップハードディスクに電子認証の年間ランニングコストを含め、約860万円でした。
導入後の現況
2009年2月に「カルテビューア」システムを導入し、使用を開始してから現在まで大きなトラブルがない状態で診療にあたっています。一部、サーバー機器などで多少の問題はありましたが、診療に支障をきたすことなく運用できています。カルテのスキャニングシステムと画像のファイリングシステムを接合させず、2ウェイのままとしたことで、各システムへの負担も少なかったものと考えています。また、レセコンはSANYOメディコムを採用していますが、「カルテビューア」システムのメーカーとの必要な連携や柔軟な対応などの協力が得られたため、業務全体として上手くまとめることができました。
結果
患者さんの待ち時間は長くなることもなく、常に患者さん目線を大切にした診療が継続できています。さらに、カルテ保管場所を本来の目的に使用することが可能となり、2階の1室は日帰り手術患者さん用のリカバリー室へとリフォームすることができました。
おわりに
開業17年を経てからのカルテスキャニングシステムの導入でしたので、保存義務のある約46,000件に上る過去のカルテを臨時職員2人がスキャン処理を行ないましたが、作業を終えるまで約6ケ月間を要しました。その作業はかなり大変であったと思います。 今では、もっと早期から、このシステムを採用していればよかったと思っています。