平成21年11月号(No.86) 抱きしめる教育 ~体も心も抱きしめよう~

【 更新日:2009/11/01 】

今年10月11日・12日に盛岡市において第15回日本保育園保健学会が開催されました。会長は、みうら小児科医院院長で盛岡市医師会副会長でもある三浦義孝先生でした。三浦先生は会長講演の中で濤川(なみかわ)栄太先生の著書『抱きしめる教育』という本の中から7つの「抱きしめ」ということを紹介してくれました。私も早速その本を読んでみたのですが、大変感銘を受けました。私自身は既にいわゆる「子育て」は終わっている年代ですが、反省ばかりが残っており本当に恥ずかしい限りです。ここに『抱きしめる教育』の内容を皆様に紹介させて頂きますので、御一読頂ければ幸いです。
抱きしめ(ホールディング)には7つの種類があるそうです。

①体で抱きしめる
②心で抱きしめる
③言葉で抱きしめる

 言葉ほど大切なコミュニケーションの手段はありません。言葉は最高の励ましや良薬にもなりますが、一つ間違えば子どもにとっては凶器にさえなります。自分を認めてほしい人から不用意な拒絶的な言葉を浴びたら子どもは非常なショックを受けます。その心の傷は深くなかなか治らないと肝に銘じようという内容が書かれてあります。マラソンの有森選手が「自分をほめたい」と言ったのは有名な話ですが、「よく頑張ったね」と自分を言葉で抱きしめることも大切であると同じように、本当に子どもに良くしてやりたいと思ったら、まず自分自身が癒されていないと相手は癒すことはできないのだと思います。
④視線で抱きしめる
 子どもがはじめて母親の手を離れて幼稚園に通い始めるとき「早く行きなさい!」と険しい顔を見せて追い立てるのではなく「大丈夫よ、行ってらっしゃい」とにっこり送り出してあげられる母親の視線はとても温かいものです。そうして「いつも見守ってくれているとわかれば、子どもは安心して自然に母親から離れることができる」まさにその通りだと思います。

⑤振る舞いで抱きしめる
 小さいころからお手伝いをする子どもは、忍耐力を養い達成感を味わうこができ、また自分の意志や目的をはっきり持てるようになります。人を助けることの心地よさも実感できるような子どもに育てたいものです。

⑥関係性で抱きしめる
 親としての責任で子どものすべてを抱きとめる、兄弟姉妹はぶつかり合いながら互いに成長する、祖父母や親戚が見守る、学校では先生が方向を示す、地域では温かく支援する―など、子どもを取り巻くあらゆるものが、子どもの健全な育成に関わっています。そのすべてにホールディングが必要であるということです。

⑦祈りで抱きしめる
 カウンセリングを何万件もやっていると、人間の力ではどうすることもできないと思うような事態に遭遇する場合があるそうです。もうそのあとは天にお任せしよう、神仏に祈るしかないという心境になるとのことです。そういう観点に立った場合ホールディングの究極は「祈り」なのだといいます。たとえば、高校野球で敗戦したチームの球児たちの様子がそれを物語っています。「もう充分やれた」という気持ちは悔しさや無念をすべて昇華してしまうほど尊いものです。ここまでの境地に到達できたという体験は、必ずその当事者の糧になるはずです。祈りには打算がなく純粋さがあります。限りない充実感が心を満たしたとき、人は幸せになれるのだと思います。


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