平成8年9月号(№29) ある患者さんとの出会い
【 更新日:1996/09/01 】
それは82才のKさんという男性からの白内障手術に関する問い合わせから始まった。
Kさんはほとんどアメリカに行く人がなかった時代にフルブライト留学生として渡米し、さらにフロリダ大学を卒業した経歴を持ち、英語に堪能で毎日英国の国際向けBBC放送を聞いているという。ある日BBC放送の中で白内障手術に関する話題が取り上げられ、その内容について質問の手紙をBBC放送に書いたところロンドン大学のライトマン教授から返事が届いたとのことであった。その概略は以下のようなものである。最新の白内障手術は超音波の振動で混濁した水晶体(レンズ)を吸引除去し、その残ったレンズのカプセルの中に眼内レンズを挿入するものであり、今では2枚に折りたたんで目の中に入れることが出来るレンズも開発され、傷口も4mm程ですむようになり、縫合も不要になってきた。しかし、手術に用いられる眼内レンズは、もって生まれたレンズ(水晶体)と異なり、暑くなったり薄くなったりしない。従って、手術後ピントを近くに合わせた人は遠くを見るメガネが、また、遠くがメガネなしで見える人は老眼鏡が必要になるわけである。
BBC放送では現在動物実験が行われているレンズの濁りを取り除いた後にある物質をそのカプセル内に注入し、調節の効く『眼内レンズ』手術のことを話題にしたようで、この点に関しKさんは質問の手紙を出したとのことであった。
Kさんには、現在白内障手術に関する私の説明を理解して頂き、7月末と8月初めに手術を受けて頂いたが、翌週からは日課の太極拳を再開し、英字新聞を読んでいるという。
『超勉強法』『脳内革命』などという本がベストセラーになっているが、私はKさんから真の勉強法を学び、少し脳内に革命を起こして頂いたような気がしている。