視力矯正、どう選ぶ?
当院院長が回答した『視力矯正、どう選ぶ?』が健 第553号(2018年10月号)の「あなたの質問にお答えします Q&A」に掲載されました。
視力矯正、どう選ぶ?
回答:医療法人小笠原眼科クリニック院長 小笠原 孝祐
Q.視力矯正どう選ぶ?
A.本人の状況を見て、眼科医と相談しながら選択を。新しい矯正方法も出てきています
視力矯正の方法
一般的に眼鏡とコンタクトレンズに分けられます(表1)。眼鏡は基本的な矯正方法です。近視は凹レンズ、遠視は凸レンズで矯正します。凹レンズは、度が進むにつれて眼に入ってきた像が小さく見え、逆に凸レンズは、眼に入ってきた像は大きく見えます。そのため、度数に左右差のある方は、それぞれの像の大きさの違いにより眼鏡がかけられない場合があります。また、視野が狭くなったり、汚れや湿気で曇ったりといったデメリットもあります。コンタクトレンズは、眼に直接レンズを装着し、視力矯正を行う方法です。眼鏡と比べ、像の歪みが少なく裸眼に近い見え方が得られます。そのため、度が強い近視や左右差のある方でも矯正は可能です。だだし、装用時間に制限があり、手入れ不足や誤った使用方法によっては眼に障害や感染症をひきおこす可能性がある為、眼科での定期検査は必要不可欠です。
○コンタクトレンズ選択の5つの基準
コンタクトレンズの種類
コンタクトレンズの種類にはハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズがあります。ハードコンタクトレンズの場合、最初のうちは眼がゴロゴロするような違和感がありますが、通常は約1週間で慣れることができます。また、強い乱視にも対応可能範囲が広くなります。しかし、強い風や衝撃で外れるため、激しいスポーツには不向きです。ソフトコンタクトレンズは素材も柔らかく大きいため、着け心地がいいのが特徴です、初めて装用する方でも違和感なくすぐに慣れることができるでしょう。また、レンズがフィットして外れにくいため、スポーツなどにも適しています。トーリックレンズという乱視矯正可能なソフトコンタクトレンズもあります。ソフトコンタクトレンズには、毎日洗浄して使用する使い捨てではないタイプと、現在主流となっている使い捨てのワンデータイプ、2weekタイプ、1ヶ月タイプなどがあります。コンタクトレンズ選択の基準を簡単にまとめますと、①装用感が気になる方には使い捨てソフトコンタクトレンズか使い捨てではないソフトコンタクトレンズ、②屋外のスポーツをしたい方には使い捨てソフトコンタクトレンズ、③アレルギーがある方は使い捨てソフトコンタクトレンズかハードコンタクトレンズ、④乱視が強い場合あるいはドライアイが強い方にはハードコンタクトレンズ、⑤目に対する安全性を重視する方にはハードコンタクトレンズをお勧めすることとなりますが、どのコンタクトレンズを選ぶかは、眼の状態をみながら眼科医と相談して決めましょう。
表1 視力矯正方法の種類
眼鏡 | コンタクトレンズ | |
説明・特徴 | 基本的な視力矯正方法 | 眼に直接レンズを装用し視力矯正を行う |
メリット | ・手入れが簡単・装用時間の制限が少ない | ・(眼鏡と比べ)歪みが少なく裸眼に近い見え方・強度近視・強度乱視の矯正が可能・左右差がある方でも矯正可能・外見が変わらない |
デメリット | ・視野が狭い・スポーツ時や入浴時、悪天候時には装用困難・強度近視の矯正に向かない・視力に左右差のある方には向かない | ・装用時間に制限があり、装用方法によっては眼に障害が発生する可能性がある・手入れや紛失等、災害時に非常に不便・ドライアイの人は装用が困難・長時間装用で角膜内皮細胞に悪影響の可能性がある・手入れ不足により感染症の危険性がある |
○ こんな生徒にはこの視力矯正が適しています
部活ではげしいスポーツをする生徒
小学校高学年になるまでは、眼鏡やスポーツ用ゴーグルの着用をお勧めしています。高学年になり、御両親の管理下にて自分でコンタクトレンズのケア、装用が出来る場合には、スポーツ時に限定してソフトコンタクトレンズの装用を認める場合もあります。御両親と眼科医とよく相談して決めて下さい。中学校まではワンデータイプのコンタクトレンズの使用が望ましいと考えられます。高校に入学後は2weekタイプの使用者が増加しますが、装用時間が長すぎないよう、また、毎日のケアをしっかり行うことがコンタクトレンズ障害を防止するためにきわめて重要です。
視力に左右差のある生徒
眼鏡の場合、度数の左右差により、両眼とも視力をしっかり合わせて処方するとグラグラしてかけられない事が多いので、度数の弱い方(視力のいい方)の眼に合わせてバランスをみて処方します。コンタクトレンズの場合には、度数の差があっても、像の大きさの差がほとんどないため、左右差があっても左右同程度の視力に合わせて処方する事が可能です。眼科医の判断により、片眼だけコンタクトを使用する場合もあります。
視力の低下が著しい生徒
学童期以降の視力低下はほぼ近視が原因です。度数が進む程度は、個々により様々の為、どの程度まで度が進むかを推測することは難しいです。その為、定期的に検査をしながら度数アップをしていく必要があります。視力が低下したからといってすぐにメガネ屋さんで強い度数の眼鏡に交換することは、近視度数の進行をもたらすことがありますので、眼科医の検査を受け、処方箋を持ってメガネ屋さんに行くことが大切です。
強過ぎる度数のメガネで近視度数が進むメカニズムについて
近視の成因に関する研究や近視進行抑制についての最近の進歩は目覚ましいものがあります。適切な度数より強いメガネを装用した場合、ピンと合わせの面からは遠視の状態になってしまうため、目の中の水晶体(レンズ)の厚さを調節する毛様筋に過度の負担がかかり、水晶体を厚くしようと働きます。そのことが目の奥行き(眼軸長)を延長させることが明らかとなっています。実際の自分の度数を正確に検査してもらう重要性をよく知っておくことと、目の毛様筋の緊張をとった状態でメガネの処方を受け、強すぎないメガネをかけることが近視度数の進行を抑制する点からも重要であることを御理解頂きたいと思います。
その他
普段は問題ないが、黒板はちょっと見えづらいかも…というくらいの生徒であれば眼鏡を作成し、必要に応じて装用するのがいいでしょう。眼鏡をかけると酔ってしまう生徒は、眼鏡の度数が合っているかどうかの確認が必要です。度数が合っていたとしても酔ってしまい慣れられない場合には、かけられる度数まで度を落として処方します。
○最新の視力矯正方法。未成年で実施できるケースも
最新の視力矯正方法には、レーシック(エキシマレーザーを用いた近視、乱視矯正手術)、ICL(きわめて薄い合成樹脂製のレンズを眼内の虹彩とレンズの間に埋め込む手術)、オルソケラトロジー(夜間に近視矯正用レンズを装用して就寝し、角膜のカーブを変化させることで日中は裸眼で生活できるようにする方法)があります(表2)。いずれの方法も適応年齢の原則は20歳以上ですが、オルソケラトロジーについては、御両親の御理解と眼科的な検査で問題が無い場合には、実施出来る場合もありますので、眼科医と相談してみて下さい。
近視の度数が中等度以下で安定している場合には、レーシックがお勧めですが、近視の度数に変動がある場合や手術を行うことについて不安がある方は、オルソケラトロジーの選択が宜しいと思います。また、レーシックの場合には、術後長期の経過をみた場合には近視の戻り(手術後の角膜屈折力の変化や加齢による近視度数の増加等による)が生じることがあります。また、ICLはレーシックでは矯正出来ない強度の近視の方が原則的に適応となるものですが、手術的な治療ですので十分な術前の検査が重要となります。尚、一度目の中に挿入したICLは手術時の創口から容易に取り出すことが出来ます。
表2 最新の視力矯正方法
レーシック | ICL | オルソケラトロジー | |
説明・特徴 | ・レーザー手術で角膜の形状を変化させ、視力矯正を行う外科的治療・近視、遠視、不正な乱視まで矯正可能・適応年齢は20歳以上
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・手術で眼の中に薄くて小さなレンズを入れ視力矯正を行う外科的治療・適応年齢は20歳以上
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・近視の方が特殊な治療用コンタクトレンズを就寝中に装用し、角膜の形状をゆっくりと変化させることで起床時に治療用レンズを外しても裸眼視力が改善し、起きている間は眼鏡やコンタクトレンズを使わずに快適な見え方を実現する治療法・適応年齢は原則20歳以上ですが、20歳未満でも慎重処方可能 |