「かゆみ・痛み」からわかる子どもの目の病気・異常

【 更新日:2018/09/10 】

当院院長がまとめた『「かゆみ・痛み」からわかる子どもの目の病気・異常』が健康教室 第815集(2018年10月号)に掲載されました。

 

「かゆみ・痛み」からわかる子どもの目の病気・異常

医療法人小笠原眼科クリニック院長 小笠原 孝祐

目のかゆみ・痛みはいずれも三叉神経が関与しており、かゆみを放置し、治療をしない状態にしておくと、それが痛みとして感じられ、重症化していくことになります。

(1)器質的疾患

①アレルギー性結膜炎と春季カタル

かゆみ・痛み症状といえば、まず最初に考えられるのはアレルギー性結膜炎です。アレルギー性結膜炎は大きく分けて季節性の花粉症と、季節に関係ない通年性のアレルギーの2つがあります。目のかゆみが食物が原因で起こることは非常に稀です。小学生以上の児童の場合にはかゆみの原因(アレルゲン)について採血検査を行い、各季節の花粉、ダニ、ハウスダスト、動物上皮、カビ等についてアレルゲンの種類と程度を知っておくことは、治療ならびに予防を行う上で非常に役立ちます。動物の上皮やフケにアレルギーを持っている児童の場合には、犬や猫と接した後、その手で目をこすった際に症状が強くなることが多くみられます。予防策としては、動物と接した後には手洗いをしっかりと行うことが肝要であると思われます。

また、アトピー性皮膚炎をもつ児童のほとんどはアレルギー性結膜炎を併発していると考えられ、目の周りが赤くなる眼瞼炎も生じている場合には、アレルギー性結膜炎の点眼を継続的に行うことが有用であると思われます。アレルギー性結膜炎が重症となり、かゆみの程度も強くなった場合には、結膜に浮腫を生じたり、痛みを伴うことがあります。その代表的な疾患が春季カタルであり、瞼結膜に著明な乳頭増殖を認めるのが特徴です(図1)。抗アレルギー点眼液の他にステロイド(副腎皮質ホルモン)剤の点眼の併用が必要となる場合が多くみられます。また、最近ではタクロリムスという免疫抑制剤の点眼液が使用出来るようになり、きわめて有効です。春季カタルを放置した場合には、角膜にシールド潰瘍という重篤な合併症を生じることがあり(図2)、治療に難渋することも少なくありません。早期発見、早期治療が大切です。

図1結膜乳頭増殖 (640x480)
図2角膜シールド潰瘍 (640x480)
図1:結膜乳頭増殖
図2:角膜シールド潰瘍

②麦粒腫と霧粒腫

麦粒腫(ものもらい)は、目の中に油分を分泌するマイボーム腺の急性化膿性炎症ですが、霧粒腫(図3)はマイボーム腺の炎症が慢性化した際に生じる慢性肉芽性炎症です。麦粒腫の初期症状がかゆみであることは珍しくなく、放置しておくと眼瞼の腫脹と痛みを生じてきます。早期に発見し、抗生剤による治療を開始することが重要です。それを怠った場合には炎症が慢性化し、切開摘出を行わなければならない霧粒腫に病態が変化していくことが稀ではありません。

図3霧粒腫 (640x480)
図3:霧粒腫

 

③さかさまつげ(眼瞼内反症と角膜びらん)

眼瞼内反症は下眼瞼に生じやすく(図4)、その多くは小学校入学前までに自然治癒しますが、小学校入学後も内反症が改善せず、角膜びらんが著明な場合(図5)には、手術治療が必要となります。角膜びらんが著明になると、目の痛みとともにまぶしさを感じ、目を開けにくくなり、涙目の症状が強くなります。眼瞼内反症の経過観察を行う場合には、角膜びらんに対する点眼薬を使用し、定期検査を継続的に受けることが大切です。

図4下眼瞼内反症 (640x480)
図5下眼瞼内反症による角膜びらん (640x480)
図4:下眼瞼内反症
図5:下眼瞼内反症による角膜びらん

④結膜異物と角膜びらん

幼少時期に多い結膜異物は、砂遊び中に目に飛入する砂の小片ですが(図6)、小学校入学以降になると異物の種類は増えます。異物が目に入った場合には、当初は痛みを感じない場合もありますが、その異物が角膜を擦過し、角膜びらん(傷)を生じた場合(図7)には激烈な痛みを自覚し、目が開けられない状態になることも多くみられます。小学校低学年以下の児童の角膜びらんを見た場合には、異物が混入していないかを確認することはきわめて重要です。また、何か異物が入ったことが予想された場合には、目を洗うことは角膜に対して逆効果となりびらんを増悪させることがありますので、洗眼は行うべきではないと思われます。一方、薬液をはじめとする液体異物が目に飛入した場合には、洗眼はきわめて大切です。

図6結膜異物 (610x457)
図7結膜異物による角膜びらん (640x480)
図6:結膜異物(砂片)
図7:結膜異物による角膜びらん

 

(2)機能的な異常からくる目の痛み

目の痛みが角膜や結膜等の炎症以外に生じることがあります。人間の目の奥行き(眼軸長)は出生時は17㎜程ですが、成人に達するまでに約7㎜大きくなります。生下時の屈折値は遠視の状態ですが、徐々にその遠視は軽減し、正視に近づいていきます。小学校の低学年までは近くで物を見るためのピント合わせの力は非常に大きいものがあります。しかしながら、小学校4年生以上になると、その順応力は低下していきます。小学校4年生以上の児童である程度の遠視が残った場合には目の痛みを訴えることがあり、中には頭痛、肩こりから吐き気を生じることがあったり、本を読むのが辛くなり、集中力の欠如につながる児童がいることも知っておく必要があります。視力が悪いというとすぐに近視と考えがちですが、遠視を見逃さないことも重要な事項です。遠視の場合は、目の中の水晶体を厚くしピントを合わせることが必要なため、目の中の毛様筋の緊張を持続させることとなり、これが目の疲れとなり、さらには三叉神経痛を生じると考えられます。このことが目の疲れのメカニズムと考えられます。眼痛、頭痛、肩こり等の症状を悪化させないためには、小学校高学年以上の児童の場合には、遠視を適切に矯正する眼鏡を装用させることが最も有効であることを知ってほしいと思います。事実、原因不明の眼痛、頭痛が遠視矯正用の眼鏡を装用することにより治癒する症例は稀ではありません。

人間の目は近くの物を見る時はオートフォーカスを行っており、これを近見反応と言います。すなわち、物を見る際には目の中の水晶体を厚くし、瞳が小さくなるとともに両方の目を内側に寄せる輻湊反応(内寄せ)が自動的に起こり、ピント合わせを行っています。この輻湊運動が障害されることがあり、その際には近くの物を見ようとした際に物がダブって見えたり、目の疲れや痛みを強く感じる場合があります。目の位置の検査(眼位検査)をしっかりと行い、輻湊不全が確認された際には、その原因を明らかにし、程度に応じて自宅ならびに眼科外来で矯正訓練を行うことにより、症状の軽減が得られる可能性があります。

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