斜視に対するボツリヌス治療
斜視に対するボツリヌス療法
≪ボツリヌス療法とは≫
ボツリヌス療法とは、A型ボツリヌス毒素製剤を外眼筋に注射して一過性の不全麻痺を引き起こし、眼位を調整する治療法です。手術に比べて侵襲性が低く、外来で実施できるというメリットがあります。
効果は通常、投与後2~3日目から現れ、1~2週で安定したのち、3~4か月で消失します。このように可逆的な治療であることから、斜視角の改善度に応じて再投与時の用量を増減し、眼位を微調整することが可能です。過矯正が生じた場合も、効果が減弱するにつれて元の眼位に復すると考えられます。
≪外眼筋の構造と機能≫
ボツリヌス療法では、眼球を司る外眼筋への注射を行います。
外眼筋は4つの直筋(内直筋、外直筋、上直筋、下直筋)、および2つの斜筋(上斜筋、下斜筋)からなります。支配神経は外直筋が外転神経、上斜筋が滑車神経、その他の4筋が動眼神経です。
ボトックスの投与方法
≪ボトックスの用法・用量≫
●成人ならびに12歳以上の小児が対象となります。
●外眼筋1つに対して所定の用量を筋肉内注射します。
●1筋あたりの最大投与量は10単位です。
<初回投与後の追加投与>
●初回投与後4週間観察して効果不十分の場合は追加投与が可能です。
●追加投与では「初回投与量の2倍」が上限用量となります。
<効果減弱時の再投与>
●前回の効果が減弱した場合は再投与が可能です。
●再投与では「過去に投与された1回投与量の2倍」が上限用量となります。
●再投与時の投与間隔は12週以上としてください。
≪ボツリヌス療法に適した患者≫
ボトックスの適応症は「斜視」であり、共同性・非共同性の両者を含みます。
ボツリヌス療法に適した患者として、手術に対して抵抗がある患者や、手術のリスクが高い患者のほか、手術後の過矯正および低矯正、発症後早期の麻痺性斜視や甲状腺眼症、網膜剥離手術後の患者などが報告されています。
<ボツリヌス療法に適した患者>
●強固な機械的運動制限がない
●手術の対象となりにくい |
≪筋電計を用いたボトックスの注射方法≫