第8回眼鏡について考える会抄録

【 更新日:2017/07/29 】

一般講演

1.当院で多焦点眼鏡処方時に心掛けていること

松田眼科クリニック院長 松田 恭一

1.累進眼鏡に初めてトライされる患者様の場合、周辺歪みが少なく、歩行時でも足元がぼやけないよう、年齢にかかわらず近用加入度数は1~1.5Dを限度としている。

2.遠用および近用レンズ装用下で必ず眼位を測定し、多少でも外斜位が検出された場合ベースインプリズム組み込みを厭わない。多くの高齢者では輻輳不全になりがちなため、調節努力と輻輳のバランスを激変させないために是非必要。上下偏位が観察された場合、必ず偏位量の1/3ないし1/2を目安としたプリズムをベースダウンに入れる。

3.眼疾患がない場合、近用加入は最大でも2.5~2.75Dに留める。これ以上では周辺歪みに対する拒否反応が出やすいため。両眼視良好ならばこの加入度でほとんどクレームが出ない。

4.強度近視の場合、近用加入は標準より0.25~0.5D少なくてよい。

5.不同視の場合、近方視でプリズム効果に差が出るため、近視・遠視ともに度の強い方を甘めに矯正する。

2.眼鏡店の遠近両用 ~進化したレンズ~

株式会社メガネの松田社長 松田 俊記

眼鏡店で実際に遠近両用を販売する際

1)よりIndividual(個別)に進化したレンズ
遠近両用、中近、近々、など目的に合わせたレンズ選択はもちろんですが、患者様の選んだフレームの上下幅、装用度数、頂点間距離、フレームのそり角、前傾角などを考慮し、レンズ設計をいちからはじめることにより患者様がゆがみを感じにくくすることが出来るようになりました。

2)進化したレンズ特性を生かすため
しっかりとしたプレフィッティング、患者様の癖に合わせたEP(Eye Point)チェック
メーカー専用アプリを使用したアイパットを使用した3要素の撮影
以上から得たデータをレンズ注文時にパラメータとして入力します。

3)お渡し時のチェックと装用指導
出来上がりで患者様に眼鏡をお渡しする際、どうしてもレンズを入れる際にフレームが少しずれてしまうため、改めてフィッティングを確認したのち、EPとレンズ中心がしっかりあっているか、近用部に視線が通っているかなどをチェックします。これらをすることにより、レンズ特性を発揮することが出来、患者様にもフィッティングの大切さを実感していただくことが出来ます。
装用指導は、足元、階段、横目、遠用から近用への度数変化などを体感していただきます。 また1週間ほど実生活をしていただいたのち、さらに患者様に合わせたフィッティングなど微調整をしていくことが大切です。

4)最後に
ようやく、レンズに患者様が合わせるのではなく、レンズが患者様に合わせることが出来るようになってきました。そのレンズを生かすため、眼科様と眼鏡店の更なる連携が求められると考えます。

3.多焦点レンズの種類と特長について

株式会社ニコン・エシロール エデュケーション/プロサービス 秀島 誠司

遠近両用レンズは遠くから近くまで見ることができ大変便利なレンズです。その中でも境目のないタイプは二重焦点レンズに比べて外観が良く、遠近両用メガネの主流となっています。(累進屈折力レンズ)

近年は10~20年前に比べて生活様式が変化してきており、パソコンに代表されるように40cm以上5m未満の中間帯の距離を多用するケースが増えてきています。この中間帯の距離は、累進屈折力レンズ上では調節力の衰えと共に自然な姿勢では見づらくなってきます。

遠近両用の累進屈折力レンズは1本で遠くから近くまでピントの合う大変便利なレンズですが、調節力の低下と共にすべての距離を1本で快適に見ることはできなくなります。そうすると、見たい距離に合わせてラクに見えるメガネを掛け替えて使用することが必要となってきます。

一般に中近タイプと呼ばれる室内用累進屈折力レンズは、水平視線で見える範囲が室内の距離を主体に考えられており、室内で過ごす時間が長い方は便利に使用できます。このタイプのレンズは、水平視線で見える距離が数タイプ有り、目的距離に合わせてタイプを選ぶことができます。

近用ワイドレンズは、近用単焦点レンズではカバーできない、近用の目的距離よりも少し先にも焦点が合うレンズです。自然な下方回旋で見える距離は近用単焦点レンズと同じなので近くが主体のレンズですが、レンズ上部では近用度数よりも-1.00~-2.50の度数が配置されているため、目線を上げた時に少し先のパソコンや机回りが見やすい老眼鏡として便利に使用できます。

特別講演

ドイツにおける眼科医と眼鏡店の役割

ドイツマイスター眼鏡院 ドイツ国家公認眼鏡マイスター 中西 広樹 様

ドイツにおける眼鏡店の環境は日本と根本的に異なっている。眼鏡店は医療機関の一部となっており、眼鏡の購入は保険医療の適応を受けることが出来る。「目は臓器である」を大前提に国家資格習得者のみ各種検査が許される。それがドイツ国家公認眼鏡マイスターである。まず、見習い生としてマイスターの元へ就職しなければ眼鏡職人養成学校への入学資格が得られない。店舗で実務を習い学校で理論と一般教養を学び3年後に一回目の国家試験に合格すると「眼鏡職人」となる。職人は検査以外の販売、加工等が許されその地位でインターンを1、2年行う。

その後、2年間国立マイスター学校に入学し目や脳の解剖学はもちろんの事、薬学、心理学、コンタクトレンズ学、教育学・法律など広範囲に及ぶ。そして最終国家試験に合格すると晴れて「国家公認眼鏡マイスター」となりこの試験は2度失敗すると一生受験資格を失うという極めて難しい試験である。ドイツ人でも実に最短7年、語学修得期間を含めると8年以上かかるのである。

現在、日本国内にはドイツ国家公認眼鏡マイスターは5名存在し内4名が現役である。

ドイツにおいては眼科医がメガネ・コンタクトレンズの処方する場合は稀で18歳以下の患者のみについては眼科医の承諾印が必要であるがその他は国家公認眼鏡マイスターの手に委ねられる。このため眼科医とマイスターの役割がはっきりしており患者さんについての情報交換も盛んに行われる。眼科医はオペや眼病治療を行い、マイスターは目と脳にとって最適な処方を行い眼鏡製作をする。日本では誰でも検査が行え知識・技術が無知でも携われる現在までのシステムは世界的に見ても非常に遅れをとっており早急に眼鏡医療教育とグローバルで通用する資格制度が構築される事を切に願う。


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