平成15年6月号(No.59) 加齢性眼疾患とその予防

【 更新日:2003/06/01 】

私たちが呼吸で取り入れている酸素のうち約2%は『活性酸素』になることが知られています。通常は原子が二つ結びついて安定している酸素分子ですが、対になる相手が見つからず原子が一つで不安定な状態を「活性酸素」とよび、この「活性酸素」は血液中の悪玉コレステロールを酸化させて動脈硬化を進め、心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすくします。また、身体の細胞を作っている脂肪酸が「活性酸素」で酸化され過酸化脂質になると、シミやシワの原因にもなります。このように「活性酸素」は生体の老化に大きく関わっているとされています。
 当然のことながらこの「活性酸素」は目の細胞にもダメージを与えます。さらに「活性酸素」は紫外線が当たると発生することが知られていますが、目は日差しの影響を直接受けやすく身体の中でも「活性酸素」による酸化障害を受けやすい部分です(サングラスや帽子で紫外線から目を守るというのは「活性酸素」から守るという意味が大きいのです)。「活性酸素」の関与が明らかな目の病気としては加齢による白内障、また患者さんの数は白内障よりも少ないですが、視力に重大な影響を及ぼす加齢黄斑変性があげられます。
 さて、身体の中にはこの「活性酸素」に対抗するスカベンジャー(いかにも正義に味方らしい名前ですね)と呼ばれるお掃除やさん達がいます。ビタミンCやE、亜鉛などのミネラルもこのスカベンジャーの仲間です。前述の通り光が通過する目の中では「活性酸素」ができやすいため、神様がスカベンジャーを特にたくさん入れておいたと見え、例えば目の中のビタミンCは血清中の約50倍もの濃度です。それでも自前のスカベンジャーだけではなかなか賄いきれないほどに紫外線量の増加や大気汚染、ストレスなどの「活性酸素」を増加させる外的要因は年々増えてきています。
 こういった目の酸化障害である白内障や加齢黄斑変性に対してはこれまで医学的根拠のある抗酸化薬が無かったため、食品から摂ることができる抗酸化物質としてカテキン類を含有するお茶やワイン、セサミノールを含むゴマなどをお勧めする程度でした。しかしながら、この度加齢性の眼疾患の発症や進行を有意に遅らせる効果がアメリカで立証された抗酸化サプリメントが日本でも発売になりました。長寿国日本においては生きている限り健やかに過ごすために、これからの医療は予防医学が重要になると考えられます。そこで当院でも今月からこのサプリメント(商品名オキュバイト)の取り扱いを始めました。一箱が約1か月分で2800円です。ご興味のある方はどうぞお気軽にご相談下さい。

副院長 大森 可芽里

加齢黄斑変性とは・・・

目の奥にある網膜という神経の膜の真ん中を『黄斑』と呼びます。黄斑は網膜の中で最も重要な部分で、ここに異常が起こると視野の中心の一番見たいところが見えなくなってしまいます。現在アメリカでは中途失明原因の第一位で、以前はメラニン顆粒の違いなどから欧米人に多く日本人には少ないとされていました。しかし、生活様式の変化や高齢化に伴って日本でも発症する人が年々増加しています。
 加齢黄斑変性の原因は1.加齢に伴う網膜やさらにその下にある脈絡膜の循環障害や2.光の照射で目の中に「活性酸素」が発生して神経に異常を引き起こす光毒性が考えられています。
 網膜の中でも黄斑は特に「活性酸素」生成の反応が活発な場所であることから、この「活性酸素」を抑える抗酸化薬が加齢黄斑変性の防御因子になるのではないかと以前から言われていました。さらに、亜鉛や高カロチノイド食を摂取している人には加齢黄斑変性の発症が少ないこともわかってきました。これらをもとに研究が進められ、今回「活性酸素」を抑える有効成分であるビタミンやミネラルを配合したサプリメントが開発されるに至りました。加齢黄斑変性がこのサプリメントで治るわけではありませんが、高度の視機能障害を残すこの病気の予防や進行の抑制に有効であり、最近の学会でも注目されています。


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