平成7年9月号(№23) 屈折矯正検査について

【 更新日:1995/09/01 】

眼科では昔から『屈折に始まり屈折に終わる』という名言があります。眼科医になって初めて取りくむ検査が屈折検査ですが、いかにこの検査が大切であり、そして、一人前の眼科医として認められるためには屈折矯正をマスターすることの重要性と難しさをあらわしているわけです。
 視力が悪ければ近視と考えがちですが決してそうではないこと、また、皆様に遠視、乱視、弱視についての理解を深めて頂きたく今月のアイマンスリーでは、この屈折を取り上げることにしました。

1.『遠視について』

遠視は無限大遠方から入ってくる光が、網膜(カメラに例えればフィルム)の後方に映像を結びます。近くからの光はさらに後ろの方にピントがずれることになります。眼軸(眼球の長さ)に比べて角膜(黒目)と水晶体(レンズ)の屈折力が不足していることが原因です。つまり、眼軸が短いか屈折力が弱いために起こる訳です。軽い遠視の場合、調節力(にらむ力)を使いどうにか網膜にピントを合わせるとができ1.0~1.2の視力をもてますが、これは常に背伸びをしているような状態では、中学生頃になるとピント合わせがうまくいかず視力が下がってくることがあります。
 ある程度以上の強い遠視では調節は難しく遠くも近くもピンとは合いません。そのため視的学習が不足して視力の発達不足になり、屈折性弱視になります。
 一般に遠視は見え過ぎだといわれますがこれは間違いで、逆に遠くも近くも見えにくく、疲労を起こしやすい目といえます。
 遠視は、両目の屈折性弱視になったり調節性内斜視を起こすこともあるので、年齢相応以上の遠視(生まれてすぐは遠視で成長と共に正視になっていく)は幼児の眼にとっては大敵ですので、できるだけ早期に発見し適切なメガネをかけ、よけいな眼への負担を取り除き弱視を防ぎましょう。

2.『乱視について』

乱視とは、角膜の形がいびつになっている状態です。角膜は普通球状の形でレンズの働きをし、外からの光を一点に屈折させます。この角膜が上下左右斜めから押されると形が歪み、ラグビーボールのように横に平べったくなったり縦や斜めにひしげてしまいます。
 そうすると光が外界からはいってくる角度によって屈折度が変わってしまい、光がひとつの点に集まらず網膜の手前に行ったり後ろに行ったりして、像全体のピントが一点にうまく合わせられなくなってしまいます。
 誰でも軽い乱視はもっていますが強い乱視がある場合は網膜の像はピンぼけになり、幼児は視的学習が不足し弱視になってしまいます。また軽い乱視でも大人は眼精疲労の原因になります。
  いずれの場合でも、その眼に適した度数のメガネあるいはコンタクトレンズを装用し、鮮明な像を網膜に結んであげることが大切です。

3.『弱視について』

生まれてから身体が健康に発育していれば、眼の働きも自然に成長してよく見えるようになるというわけでは必ずしもありません。
 生後6か月ころから3才にかけて眼の働きは速いテンポで育っていきます。しかし、そのためには全身の栄養状態が良いだけでなく眼が正しく十分に使われていることが必要です。外からの刺激を受け、良い条件で見る学習をしないと視力は勿論、立体感覚などの眼の大切な働きも発達しなくなります。脳や筋肉を使わないと知能や運動能力の成長が遅れるのと同じです。
 この時期(臨界期あるいは高感受性期といいます)にいろいろな原因により眼の学習ができない状態でいると、その眼は使われなくなり視力の成長はストップしてしまいます。
 見る学習を妨げる原因にはいろいろありますが、強い遠視や乱視、斜視などが主なものです。これらの原因を放っておくと視力が未発達の状態のまま固定してしまい『弱視』になってしまいます。
 平成2年から3歳児健診に視力検査が取り入れられたのもこのような理由からです。


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