スポーツ振興の土壌づくり

【 更新日:2013/03/27 】

小笠原 孝祐

30年前の秋、グラスゴー大学を訪問する一員に加わり、英国のロンドンからグラスゴーまでの約500kmをバーミンガム、マンチェスターを経由して列車で移動した。その車窓から目に入った状景は、素晴らしいブルーグラスの芝生が敷き詰められた何面ものサッカー場とラグビー場でプレーする多くの若者たちの姿であった。サッカー、ラグビーとも発祥地は英国であり、その伝統が歴史の重みを含んだ土壌の上で脈々と受け継がれている。うらやましい気持ちとともに、大きな感動を覚えた。
 さて、2016年に予定される2巡目岩手国体の主会場が北上市に決定された。残念でならないのは、国体の運営についての具体案が県民に提示されないままに、はじめに予算ありきで議論が進められたことであった。
 今回の決定は、国庫補助金として見込める72億円を活用するチャンスを逸し、また、Jリーグ誘致の期待が元のもくあみという結果をもたらした。
 国体は終戦直後の混乱の中、スポーツを通して国民、とりわけ青少年に勇気と希望を与え、日本スポーツの再建にむけて開催することになったわけであるが、本県の現状を顧みた場合、1970年に開催された国体時と比べ、各種競技の環境整備は十分に整ってきたと言えるであろうか。
 小さいころや若い時の感動は大きな夢につながり、社会を活性化することは間違いない。それは、スポーツ以外の芸術や音楽にも当てはまるものである。「一流の世界を間近で見る機会を県内の青少年に与えたい」と願うのもそのためである。
 土壌を肥沃なものにするためには、良い指導者と人材の発掘、育成が重要であることは論をまたないが、施設の充実も大切な要素である。30年前に脳裏に焼きついた英国の風景は、伊集院静氏の表現を借りれば「窓を流れる風景に心を奪われた」経験そのものであった。青少年の夢をかなえ岩手県に活気を取り戻すために、国際的な視点から総合的なスポーツ振興の土壌づくりに取り組んでいただきたいと願うものである。
 岩手国体の主会場が北上市に決定されたことについては、歴史が評価を下すものと考えるが、県政を担う方々には期待をこめて以下のメッセージを送りたいと思う。ゆるぎない伝統文化の礎となるのは青少年の意識向上であり、その土壌づくりのための援助と協力を惜しまない郷土愛に満ちた人たちがたくさんいるということを。


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