斜視・弱視

【 更新日:2015/12/14 】

現在、眼科における学校検診は視機能を重視する方向へ進んでいますが、その理由は近視の児童の増加が著しいことだけではなく、弱視や斜視の患者の早期発見と適切な治療の重要性が認識されてきたからです。平成2年から3歳児健診に視力検査が導入されたのもその表れであり、また、就学児眼科健診の大切さが強調されているのもそのためです。
斜視(寄り目)は、目の位置を手術によって正常に戻せば治ったと言えるのでしょうか?否、斜視治療の目標は物を2つの目で立体的かつ奥行き感をもって見ることのできる両眼視機能の獲得です。その為には、診断と適切な治療が重要であり、適切なメガネをかけたり、訓練によって治すことのできる斜視の患者さんも少なくありません。
また、片眼のみの遠視が強いためにおこることが多い不同視弱視の治療も視能矯正によって行われます。また、いろいろな眼疾患で視力がそこなわれた方に対し、日常生活上の手助けとなる補助器具の紹介と説明を行い、実際に使用法の指導を行うロービジョンクリニックも月2回木曜日の午後(予約制)に開設しています。
上記のような検査・訓練・治療を行うのが国家試験資格の視能訓練士(ORT)であり、近年増々その重要性が大きくなっています。当院には5名の視能訓練士が在職し、毎日の診療に活躍しています。

弱視について

生まれてから身体が健康に発育していれば、眼のはたらきも自然に成長して良く見えるようになるという訳では必ずしもありません。
生後6ヶ月頃から6歳にかけて眼のはたらきは早いテンポで育っていきます。しかし、そのためには全身の栄養状態が良いだけではなく眼が正しく十分に使われていることが必要です。外からの刺激を受け、良い条件で見る学習をしないと視力はもちろん、立体感覚などの眼の大切なはたらきも発達しなくなります。脳や筋肉を使わないと知能や運動機能の成長が遅れるのと同じです。
この時期(臨界期あるいは高感受性期と呼びます)にいろいろな原因により眼の学習ができない状態でいると、その眼は使われなくなり視力の成長はストップしてしまいます。見る学習を妨げる原因にはいろいろありますが、強い遠視や乱視、斜視などが主なものです。これらの原因を放っておくと視力が未発達の状態のまま固定してしまい、「弱視」になってしまいます。

遠視について

遠視は無限遠方から入ってくる光が、網膜(カメラに例えればフィルム)の後方に像を結びます。近くからの光はさらに後ろの方にピントがずれることになります。眼の長さに比べて角膜と水晶体の屈折力が不足していることが原因です。つまり、眼軸(眼球の長さ)が短いか屈折力が弱いために起こるわけです。軽い遠視の場合、にらむ力(調節力)を使いどうにか網膜にピントを合わせることができ、1.0~1.2の視力をもてますが、これは常に背伸びをしているような状態といえます。このような状態では、中学生頃になるとピント合わせがうまくいかず、視力が下がってくることがあります。
ある程度以上の強い遠視では調節は難しく、遠くも近くもピントが合いません。そのため、視的学習が不足して視力の発達不足になり、屈折性弱視になります。
また、遠視が原因で調節性内斜視を起こすこともあるので、年齢相応以上の遠視は幼児の眼にとっては大敵です。一般に遠視は見え過ぎだといわれますが、これは間違いで、逆に遠くも近くも見にくく、疲労を起こしやすい眼といえます。できるだけ早期に発見し、適切なメガネをかけ、余計な眼への負担を取り除き弱視を防ぎましょう。

乱視について

乱視とは、角膜(黒目)の形がいびつになっている状態です。角膜は普通球状の形でレンズのはたらきをし、外からの光を一点に屈折させます。この角膜が上下左右斜めから押されると形が歪み、ラグビーボールのように横に平べったくなり、縦や斜めにひしげてしまいます。そうすると、光が外界から入ってくる方向によって屈折度が変わってしまい、光が一つの点に集まらず網膜に正しく焦点を結べなくなってしまいます。
網膜の手前にいったり後ろにいったりして、像全体の焦点が一点にうまく合わなくなってしまうのです。
誰でも軽い乱視はもっていますが、強い乱視のある場合は網膜の像はピンボケになり、視的学習が不足し弱視になってしまいます。また、軽い乱視でも大人では眼精疲労の原因になります。
いずれの場合でも、その眼に適した度数のメガネあるいはコンタクトレンズを装用し、鮮明な像を網膜に結んであげることが大切です。

不同視について

屈折の程度が左右の眼で異なる状態を不同視と言います。左右の度の差が少しの場合は心配ありませんが、差が大きいと屈折度の強い方の眼の網膜に正しくピントを合わせることができません。遠視度、近視度そして乱視度の強い方の眼は視的学習が不足し、視力の発達が不十分になります。このような眼を不同視弱視と言いますが、遠視の場合は特に注意が必要です。
また、左右どちらかの眼の視力は良いことから、子供自身から訴えることが少なく、片方の眼が悪いことに気付くのが困難です。そのため発見が遅れがちですが、なるべく早く(遅くても4歳くらいまで)発見し、専門医から適切なメガネの処方を受け、両眼の網膜にきちんとピントを合わせ弱視を防ぐことが必要です。

斜視について

斜視とは、両眼の視線が正しく目標に向かわない状態のことで、子供では約2%前後にみられます。斜視の種類は眼の寄り方から次のように区別されます。

右眼で見たとき 左眼で見たとき
内斜視 ET-R ET-L
外斜視 XT-R XT-L
左眼上斜視(右眼下斜視) LHT-R LHT-L
右眼上斜視(左眼下斜視) RHT-R RHT-L
交代性上斜位 DVD-R DVD-L

また、常に斜視になっているものを恒常性斜視、時々斜視になるものを間歇性斜視といいます。斜視の原因には次のようなことが考えられます。

1)両眼視の異常
両眼視とは左右の眼それぞれで見た像を脳で一つにまとめて見る感覚のことで、立体感のような感覚は両眼視によって生じます。生まれたばかりのときには、まだ両眼ともしっかりと物を見ることができないので両眼視はできません。
それが次第に両眼を使って物を見るという自然な訓練により両眼視ができるようになっていきます。この両眼視の発達が途中で止まると斜視になります。斜視になると物が2つに見えますが、2つに見えるということは苦痛なため、1つの像を消して片眼だけで物を見ようとします(これを抑制といいます)。このようにして、両眼視の発達は途中で止まるばかりでなく、普通の人とは違う感覚などが生じ悪い方向へと発展してしまいます。

2)視力の異常
正しく両眼視するためには、両眼ともある程度以上の視力が必要です。生まれつき、あるいは両眼視が成立する前に病気やケガのために片眼の視力が悪かったり両眼の視力が悪かったりすると両眼視は発達せず斜視になります。

3)遠視
遠視が原因で起こる斜視があります。近くを見るときには、眼球の中の水晶体が厚くなりピントを合わせます(これを調節といいます)。中等度の遠視があると物を見る時に余分に調節する必要があり、そのために眼が寄って内斜視になってしまいます。このように遠視が原因で内斜視になるものを調節性内斜視といい、このタイプの内斜視はメガネをかけることにより視線がまっすぐ(正位)になります。

4)眼の筋肉や神経の異常
眼を動かす筋肉や神経の異常のために眼球運動がうまくいかなくなると、眼の位置にズレを生じ斜視になります。このような斜視を麻痺性斜視(一般的には眼筋麻痺と呼ばれています)といい、その他の斜視を共同性斜視といって区別しています。また、眼球を動かす筋肉自身に病気がなくても、筋肉と眼球の付着部に異常があれば斜視になります。
斜視の治療にはメガネや手術、訓練、目薬などがあり、なるべく早い時期に専門医による
適切な治療を受けることが必要です。


TOPへ